将来、書籍化される「風の又三郎」を書いた時の宮沢賢治は神がかり的。
え?そうなの?
と思ってしまうほどそれまでのギャップが激しい。
でも書いたけど相当のヘコタレだよ?
宮沢賢治26歳。
仕事もプライベートも完全に詰まった状態で町を歩いてたら文房具屋さんを見つける。
そこには大量の原稿用紙。
パッとひらめいて下宿先に戻り、昼夜問わず溢れ出る激情のままに書きなぐっていく。
え?さっきまでヘタレだったでしょ??
確かに伏線はあった。
幼い頃には妹に自ら作った話を聞かせてた。
大人の世界が苦手だったのも解る。
家業の生臭い質屋さんが嫌だったんでしょ?
だから逃避しようとして夢みたいな起業計画を立てたりもしたんでしょ?
でも。でもさぁ~
…なんかイメージと違ったんですよね。
私の勝手なイメージだけど。
宮沢賢治の作品を多くは知らない。
けれど、彼自身のことは、例えるなら太宰治のように繊細で、神経が研ぎ澄まされたような感じで…人間臭くない人のように考えてた。
だからあんなガラスのような、キラキラとした子供のような表現と、ともすれば壊れてしまいそうな危うい文体ができあがったのだと思っていたから。
まさかそんなダメダメな人間が書いたとは思えなくて。
だって完全に詰まるまでは、話の一つも書いてなかったじゃない。
作品ができるまで、いくつも話を書いた苦悩の末に閃いた!ならわかるけど。
…きっとそういうとこが天才なんでしょうねぇ…。
宮沢賢治が「風の又三郎」を書いていく下りを読んだら、そう思わずにはいられなかった。
もう、参りましたってくらい。
戦ってた訳でもないけれど完全な敗北。(宮沢賢治に失礼)
多分私がそう思ったのは。
それまで(幼い頃を除いて)宮沢賢治は全然なダメ男だったから。
(宮沢賢治ファンの人、本当にごめんなさい)
青年時代を読むうちにいつしか見下げてたんだと思う、彼のこと。
でももう今は才能を開花させてしまった宮沢賢治。
本の続きを読んでいくにしたがい、私はこれからも「馬鹿にしてごめんなさい、宮沢賢治さん」と思い続けていくのかしら。
本当はこの本全部読みきってから感想を書こうと思ったけれど、急展開にあまりにも突っ込みたくなってしまった私。
そして思わず誰かに伝えずにはいられませんでした。
次が最後の書評になれたらいいな、なるかな…。